研究概要 |
(1).不安定系の量子化:大域的には不安定であっても局所的に極小領域がある場合,積分核を適切に選べば,場の量が不安定領域に落ち込むことを回避できるアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムによれば場の量を十分長時間にわたって局所的極小領域に止めておける.その結果,この領域を中心として不安定系を非摂動的に量子化できる.本研究では,まず,負の係数のφ^4模型に対し積分核を工夫,効率的なアルゴリズムを開発し,不安定系の量子化を図った.その結果、積分核付きLangevin方程式に基づく確率過程量子化法は係数が正のみならず,負の場合でも望ましい作用を再現することが分かった.負の場合は物理量の期待値とその長時間平均との間に成り立つエルゴ-ト的性質は一般的に存在しないが,このアルゴリズムに基づく数値計算では時間平均が安定に存在する. 一方,一般的に確率過程系での定常状態は安定である.従って,定常状態の確率分布で準安定状態の確率過程を記述することはできない.しかし上述のように非定常的確率過程でも定常的なサンプルパスを持つことができる.この事実を利用して準安定状態の確率過程を記述する枠組みを作ることを試みている. (2).Chern-Simons場の量子化:Chern-Simonsゲージ場は特異的系であるうえに,ふつうの波動場とは異なり,場の方程式が時空間座標に関して1次の微分となっている.そのため,通常の理論で量子化するにはゲージを固定する必要がある.この枠組で量子化すればゲージを固定する必要はないものの,場の方程式が時空間座標に関て1次の微分となっていることから,基礎方程式が拡散型のLangevin方程式となって,その熱平衡極限の存在が保証されない.ここでは,適切な積分核を選ぶことによって,熱平衡極限の存在を保証する.一方,幾何学的量子化法では,公理論的にその構造が調べられる.今年度はそのための初歩的計算を行った.
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