研究概要 |
本研究では,円筒型空洞において,原子の自発放射確率を理論的に計算した.簡単のために,空洞は完全導体からなり,原子と空洞電磁場は双極子相互作用をしていると仮定した.原子お自発放射確率を求める前に,空洞電磁場を量子化しなければならない.量子化の一つの方法は空洞の境界条件を満たす(ベクトル型)モード関数をすべて求め,それによって電磁場を展開することである.それにより,量子化された電磁場(光子)を得る.電磁場の分解公式を一般的に求め,それを使用することにより,すべてのモード関数(TM,TEモード)を求めることができた. 空洞内の原子の量子論的振る舞いは自由空間の場合と大きく異なる.いろいろな方向の双極子に対して,(長さ無限大の)空洞と自由空間の自発放射確率を比較した.空洞の半径が非常に小さい場合,自発放射は禁止される.これは光子が空洞の境界条件を満たすことができなくなるからである.一方,空洞の半径が一定の値をとると,自発放射確率は極端に大きくなる.これは共鳴現象であり,そのような共鳴を起こす点(半径)が無数に存在する.さらに,自発放射確率の極小点は,円筒の半径が大きくなると共に,自由空間のそれに近づくことが判明した.しかしながら,長さ無限大のために共鳴点の割合が減少することはない. 空洞におけるプランク長さのオーダーの時空のゆらぎを調べる準備として,自由空間の場合にそれを考察した.このゆらぎは時空内を運動するミクロな粒子に対しては無視し得る効果しか及ぼさない.しかしながら,マクロな粒子の波動関数の時間発展に対しては大きな影響を与え,その自発的な局所化を引き起こす.
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