研究概要 |
本年度研究では,1.四万十帯の砂岩・泥岩,2.白亜系陸成層,3.内帯・外帯の古生代地帯について分析用試料の採集と蛍光X線分析を行った.四万十帯については昨年分析をおこない,結果をまとめている.また,分担者ではないが砂岩の重鉱物組成について検討が進められており,島根大学において研究討論した. 外帯の四万十帯の白亜系と比較検討するため,同じ白亜系の陸成層の関門層群についても検討した.また,国際学術研究においても韓半島の白亜系慶尚層群を検討しており,西南日本の地帯群と大陸地殻を持つ韓半島の検討結果について比較検討した. 昨年度に引き続き内帯・外帯の古生代地帯についての比較検討を行った.その結果,内帯の諸地帯はそのprovenanceには成熟した島弧や大陸縁辺が予想され,反対に外帯の地帯には未成熟の島孤地殻を持つと考えられ明瞭な相違を示し,両地帯群が古生代には異なるprovenanceを持つことが明らかにされた. 堆積岩の元素組成はprovenanceを構成する岩石の特徴に大いに関係を持つが,堆積作用や続成作用によっても大きな影響を受ける.特に風化過程や風化の程度はアルカリ元素やアルカリ土類元素に大きな影響を与える.本研究ではそれらの元素について,風化作用を評価する指標を用いて各地帯について検討した.その結果,内帯・外帯の古生代地帯では内帯の方が源岩の風化の程度は一般に高く,このことは気候の変化の状況とも関連すると考えられる.中生代ジュラ紀では両地帯ともに成熟したprovenanceをもち,風化の程度はどちらも高くなる.これは内帯・外帯の諸地帯の東アジアへの収束を意味し,両者ともに同じ,もしくは同様のprovenanceを持つことによる.白亜紀では内帯・外帯の火成作用の違いが反映した元素組成を示すことが明らかとなった.
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