新規に作製した矩形管路内に、水ー空気系泡沫を流し、流動抵抗の測定実験をおこなった。計測には、昨年度購入した、圧力変換器、シグナルコンディショナ-、およびパーソナルコンピュータ等を使用した。本年度の予算は、主として界面活性剤等の消耗品の購入に使用した。 これまでの研究で、管路内の泡沫の流動は、内部の泡沫(非ニュートン流体)が壁面に接する液膜(ニュートン流体)によって滑り流動するモデルで近似できることが分かった。また、この液膜(滑り層)は、その厚さが極めて薄いにもかかわらず、泡沫全体の流動抵抗を支配していることも示された。 本年度は、前述の実験の他に、単一気泡の円管内流動実験を行い、壁面との干渉による気泡の変形を高速ビデオカメラにより調べた。この実験は、滑り層厚さの直接測定を意図したものである。その結果、(1)小気泡よりも大気泡のほうが変形が大きいこと、(2)気泡の流動速度が増加するほど、気泡の変形も大きくなり、壁面から気泡までの距離が増加することが分かった。これらの結果を泡沫の流れと関連付けると、つぎのように考えられる。壁面近くの泡沫気泡も、流速が増加するほど変形の程度が大になり、その結果、滑り層厚さも増加する。すなわち、同じ気液比の泡沫であっても、流動速度により滑り層厚さが変化するため、泡沫の見かけの粘度(壁面せん断応力と壁面せん断速度の比)は一定にはならない。換言すると、流動泡沫の見かけの粘度は、気液比などの泡沫の性状を表わす量の他に、流動速度といった運動を表わす力学的な量にも依存しているといえる。 本研究によって、泡沫の流動抵抗を予測するためには、泡沫の平均気泡直径や気液比などの泡沫性状のほかに、流動気泡の変形による滑り層厚さの変化を考慮しなければならないことが示された。
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