液体泡沫を管路輸送する場合の動力損失を明らかにする目的のために、円管流路、および矩形流路を用いて泡沫の流動実験を行い、流動抵抗を測定した。水-空気系泡沫の泡倍率の広い範囲に渡って、種々の大きさ流路を用い、圧力降下を調べた。 本研究で、流動泡沫の見かけの粘度は、溶液の値に比べて数倍から数百倍も大きいこと、また、泡沫の流動抵抗は、ニュートン流体や気液二相流に対する従来の理論では予測できないことが示された。流路内の泡沫の流動は、内部の泡沫(非ニュートン流体)が壁面に接する液膜(ニュートン流体)によって滑り流動するモデルで近似できる。また、この液膜(滑り層)は、その厚さが極めて薄いにもかかわらず、泡沫全体の流動抵抗を支配していることも示された。さらに、この滑り層の厚さは、気泡間の平均液膜厚さと同じオーダであることも分かった。 泡沫を連続流体と見なす既存の流動モデル(C-Nモデル)は、モデル中に含まれる定数の値を、流動条件毎に適当な値に設定できれば、実験値と近い結果を得ることが可能である。しかし、その適用範囲は、流路の大きさが平均気泡直径に比べてかなり大きい場合に限定され、流路が小さくなると連続流体モデルでは、実際の現象を説明することが困難である。 流路の大きさと泡沫の平均気泡直径が同じオーダーの場合には、流動泡沫の見かけの粘度が小さくなる結果が得られた。この現象は、流動気泡の変形による滑り層厚さの増大と、滑り層上端の気泡界面のせん断力による移動が関係しているものと考えられる。 本研究によって、泡沫の流動抵抗を予測するためには、泡沫の平均気泡直径や気液比などの泡沫性状のほかに、流動気泡の変形による滑り層厚さの変化なども考慮しなければならないことが示された。
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