研究概要 |
本研究では,鋼構造の強度を静的な強度のみならず耐震性能の面からも捕え,それを構成する板パネル・円筒パネルおよびそれらからなる部材を対象に, 1.鋼部材を構成する板パネルと円筒シェルのダクティリティーに関する研究 2.局部変形を考慮した繰り返し変動曲げを受ける鋼圧縮柱の変形能に関する研究 を計画した.その結果,平成8年度にはつぎの事項を明らかにすることができた. (1)円筒パネルのダクティリティーの評価;三上は,初期不整を有し,圧縮力を受ける円筒パネルの幾何学的・材料的非線形挙動を動的緩和法で解析し,円筒パネルの縦横比・曲率半径比・幅厚比・初期不整などが円筒パネルの終局強度と劣化域での変形特性に及ぼす影響を解析的に明らかにした.その結果,耐震上,好ましい円筒パネルの幾何形状を明らかにすることができた. (2)鋼圧縮柱の繰り返し曲げ挙動:堂垣は初期不整を考慮したはり-柱の幾何学的・材料的非線形挙動を差分法と有限要素法の2方法で解析し,漸増荷重下での鋼圧縮柱の劣化特性と塑性率の関係,および繰り返し曲げによる鋼圧縮柱の劣化特性などを明らかにした.すなわち,部材の細長比,部材の断面形状,圧縮力の大きさ,初期不整などと終局強度,変形性能(塑性率),エネルギー吸収能などの関係を検討し,ダクティリティーに富んだ鋼柱の幾何形状を明らかにした. さらに,当初の研究を進め,鋼製橋脚の耐震性を高める方法として,橋脚の基部にコンクリートを充填することを考え,それによる変形性能の向上と地震後の復旧対策の一手法を検討した. 平成9年度は,当初の計画通り, (1)耐震設計で規定される円筒パネルの幅厚比制限の規定 (2)局部変形を考慮した鋼柱の反復曲げ挙動 を研究し,市民が安心して生活できる社会資本の充実のための指針づくりに寄与する.
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