研究概要 |
Na^+イオノフォアとしてすでに実用化されているビス(12-クラウン-4)誘導体は、光学活性な(R,R)および(S,S)体とメソ型の(R,S)あるいは(S,R)体の混合物と考えられた。そこで、光学活性なクラウンユニット部を合成し、これをスペーサー部(マロン酸あるいはフタル酸)で連結することによって、5種類の光学活性なビス(12-クラウン-4)誘導体と1種類のメソ型誘導体に導いた。ついで、各誘導体(キャリア)、PVC、膜溶媒(可塑剤)、および親油性塩からなる可塑化PVC膜電極を作成し、次式の電池を構成し、混合溶液法により各妨害イオンに対するNa^+の選択係数(-log k^<pot>_<NaM>)を求め、Na^+の選択性を評価した。 Ag-AgCl/内部液/PVC膜/試料溶液/0.1M NH_4NO_3/4M KCl/AgCl-Ag 置換基にC_<12>H_<25>-およびCH_3-を持つマロン酸で連結した(R,R)-(+)-ならびに(S,S)-(-)-ビス(12-クラウン-4)誘導体の場合、K^+に対するNa^+の選択性(-log k^<pot>_<NaM>)は、各々2.17および2.20であり、相当する組成の光学不活性なビス(12-クラウン-4)誘導体の場合(-log k^<pot>_<NaM>=1.92)に比べて約2倍向上することを認めた。また、置換基として2つのC_6H_5-を持つ(R,R)-(+)-ビス(12-クラウン-4)誘導体の場合も、-log k^<pot>_<NaM>=2.19と改善される。一方、フタル酸をスペーサーとする(R,R)-ならびに(S,S)-ビス(12-クラウン-4)の場合もNa^+イオン選択性に優れるが、メソ型の(R,S)誘導体の場合も、光学不活性なビス(12-クラウン-4)よりNa^+選択性が低下する。各誘導体に見られるNa^+選択性の違いについて、FAB-MS法ならびにCPKモデル実験で検討した。その結果、光学活性な誘導体では、2つのクラウン環の対面性に優れ、形成される空孔径も小さいため、Na^+との錯形成が優先的であることがわかった。以上の知見の一部をChemistry Letters,1997,49に報告した。
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