渓流の生態系保全を考慮した土砂コントロール手法の確立という目的のため、筑波大学川上演習林内の鞍骨流域に採水器を設置し浮遊土砂および有機物の流出量、水質についての観測を行うとともに水文観測、土砂流出量および渓流地形の計測を行った。そして、得られたデータの解析から、まず当渓流におけるstep-pool構造の特性を明らかした。つぎに、斜面崩壊による河床への土砂流入に対してstep-poolの形成および消失という形で河床が撹乱を吸収していく過程を明らかにした。さらに、出水時の浮遊土砂・有機物の流出については、そのピークが流量のピークと同時か数時間先行して出現していることから、河道内の微細土砂および有機物が浮遊土砂・有機物流出のソースになっていると推定した。また、双峰型のハイドログラフを示す出水の分析から、浮遊土砂・有機物流出は典型的なsupply limitedな現象であることを確認した。水質では、NO_3が他のイオンと流出に対する応答が異なっており、有機物流出との関係が示唆された。なお、年間(出水時)の総浮遊土砂量と有機物流出量を推定したところ、前者が22.4t(59.3t/km^2/s)、後者が8.4t(22.2t/km^2/s)となった。年間の出水による掃流土砂流出量は1.9tと測定されており、土砂流出量の把握という意味でも浮遊土砂量および有機物量の把握が重要であることを明らかにした。最後に、step-pool河床の変形に及ぼすsediment waveの重要性を指摘した。
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