研究概要 |
本研究は、睡眠・覚醒サイクルや概日リズムの加齢による変化を、自然な生活スタイルの中で捉えることを目的としている。最近、各方面で応用されてきた手首に装着可能なMini-Motion-Logger Actigraph(アクチグラフ;Amburatory Monitoring Inc.New York,USA)について、物理振子として加速度を加えたときと、人の手で握ってアクチグラフを振ったときの応答特性を解析した。ついで、人の基本的な動作・行動によるアクチグラフの反応特性、心拍数との関連性、さらには、睡眠ポリソムノグラフとの一致性などの基礎的検討を行なった。 その結果、アクチグラフを物理振子として周期的に加速度を加えた実験では、アクチグラフのZ軸が重力方向と一致している場合に、最も安定した高感度(1.71Hzで0.003g)の応答特性を、重力方向と垂直な場合にはランダム性の強い応答特性を示した。人の手で振った場合には、アクチグラフZ軸の方向如何を問わず一様なカウント特性は得られた。こうした実験結果より、アクチグラフのセンサー・モデルを推定した。一方、人の基本的な動作・行動時の非利き腕アクチグラフ・カウント数は、心拍数との間に高い相関関係がみられ、覚醒時の大まかな動作・行動を判別することが可能であり、かつアクチグラフの活動量と睡眠ポリソムノグラフから判定した睡眠・覚醒一致率は96.9%で、その他、全睡眠時間、睡眠効率、入眠潜時、中途覚醒時間および中途覚醒回数における両者の相関関係もほぼ完全相関に近かった。 以上の結果から、アクチグラフは被験者への負担も少なく、自宅での日常行動や睡眠・覚醒の客観的な判定のみならず、概日リズムの位相差など、多方面のフィールド研究に応用可能であると結論された。現在、引き続き高齢者や妊産婦、高圧潜水ダイバーの睡眠・覚醒判定に測定・応用している最中である。
|