研究概要 |
本年度は脳死状態を経過後心停止に至り,司法解剖に付された患者の組織中薬物濃度を測定することにより,脳死に至った時期と脳死状態に至る経過を判定できるかどうかの検討を行った. 司法解剖に付された49歳男性の各体組織中からGC-MSによりmepivacaine,pentazocine,lidocaineおよびthiamylalを検出した.mepivacaine,pentazocine,lidocaineの脳中濃度の対血液中濃度比はその他の体組織のそれに比べて高くなり,一方thiamylalの比は低くなった.そこで脳血流は前者の薬物の投与後,後者の薬物の投与前に停止したものと考えられた.脳の7つの部位についての各薬物の濃度は前者の薬物は,後頭葉と頭頂葉で高く,後者の薬物は小脳と延髄で高かった.以上のことから,脳血流は後頭葉と頭頂葉で最初に停止し,小脳と延髄で最後に停止したと考えられた. 以上の結果,脳の各部位を含む体組織中薬物濃度を測定することは,脳死の時期と脳死に至る経過を知る上で大変有用であることが判明した.
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