研究概要 |
10代前半に急性炎症で発症し,その後の経過から慢性膵炎が確診できた教室症例の臨床解析を行った.膵胆管合流異常,各種代謝異常を除くと11例(膵石灰化5例)が該当した.7例6家系(膵石灰化2例,インスリン治療者なし)が家族内に2人以上の膵炎患者を有していた.親子例が4家系,兄弟例が2家系であったが,同胞がいない2例,片親が不明な2例おり,判定は不能であった.2世代以上で患者が出現し,特に10歳代での発症であれば,2症例であってもGrossらのいう遺伝性慢性膵炎例とすることが妥当である. Lowenfelsらのグループ(the International Hereditary pancreatitis Study Group)に21歳以下の発病,2人以上の膵炎症例が家族内に認められること,他の原因がないことを条件とした集計に参加した.われわれの6例を加えた246例(男125例,女121例,13.9±12.2歳で症状出現)で膵癌発生の危険度(53倍)が有意に高く,今後十分な経過観察が必要なことが明らかとなった. 末梢血中のリンパ球のゲノムDNAからヒトpancreatic trypsin inhibitor (PSTI)遺伝子に対するオリゴヌクレオチドプライマー,PCR法でPSTIcDNAを検出した.そのsequenceからこれまで一例において-塩基だけの変異例があったがsilent mutationであり,その後の症例でも異常は認めていない.またWhitcombはCaucasianの遺伝性症例にクロモゾーム7長腕にあるcationic trypsinogen geneの異常がtrypsinの活性の異常な持続に関係することを発表した.われわれはこのプライマーのを設計し日本人についても検討を進めている.報告は次年度になる予定である.
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