研究概要 |
ベサミコールはシナプス前終末部のシナプス小胞膜に存在するアセチルコリントランスポーターに特異的に結合し、アセチルコリンのシナプス小胞への取り込みを抑制することから、コリン作働性神経系に深く関与しているとされている。今回、光学活性な(-)-m-ヨードベサミコールをI-125で標識合成し、そのインビトロおよびインビボでの結合特異性を調べ、コリン作働性神経機能診断薬としての可能性について検討した。その結果、インビトロ実験において、(-)-m-ヨードベサミコールはベサミコールレセプターに対し、ベサミコールと同様光学特異的で高い親和性(K_d=18.2nM、B_<max>=660fmol/mg of protein)を示し、さらに他のレセプター(ドーパミン、セロトニン、アドレナリン、アセチルコリンおよびシグマレセプター)に対する親和性は低かった。インビボ実験でも、(-)-m-ヨードベサミコールはラット脳で投与量の3%以上の集積を示し、オートラジオグラム像はアセチルコリントランスポーターmRNAによるin situハイブリダイゼーションによる脳内分布と同様、海馬のピラミダールセル、対角帯、梨状葉皮質、扁桃核群、第5,7運動神経に高い集積が見られた。これらの結果から(-)-m-ヨードベサミコールはコリン作働性神経機能診断薬としての有用性が示唆された。 また、アルツハイマー性痴呆モデルラットを用いて(-)-m-ヨードベサミコールの脳内分布変化を検討した結果、モデル動物の大脳皮質に集積低下が観察された。この実験については今後、さらに血流との比較や詳細な部位別比較の検討を行う必要があると考えられる。
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