骨盤下肢動脈1回撮像法の検討 (1) 移動用寝台の作製 木製天板およびプラスチックローラーを使用し、患者が乗った状態でも簡単に移動可能な移動寝台を作製した。基礎検討で寝台併用時の信号減弱は3%以内であり、撮像上の障害とはならないことを確認した. (2) 正常ボランティアによる撮像条件の設定 正常ボランティアによる基礎実験により、造影剤注入速度、撮像開始時間、撮像時間、造影剤投与量の基礎的な検討を行った。造影剤注入速度は0.3ml/秒、撮像開始時間は造影剤到達時間+30秒、撮像時間20秒、造影剤投与量20mlの条件下に寝台を移動しながら4部位での撮像を連続して行うことにより腹部から下肢末梢までの動脈像を一回の検査で撮像可能なことを確認した。同法によりよる画像信号の解析については第26回日本磁気共鳴医学会にて発表し、現在同学会会誌に論文投稿・審査中である。 (3) 動脈疾患への応用 この方法を用い、閉塞性動脈硬化症をはじめとする種々の動脈疾患の評価を行った。動脈閉塞をともなう症例でも末梢の動脈については血管造影とほぼ同様の描出能が得られ、特に膝関節以下の末梢動脈描出には血管造影を上回る結果が得られた。動脈瘤をはじめとする拡張性病変についても血管造影と同等の評価が可能であり、腹大動脈瘤にたいする有用性について日本医学放射線学会雑誌に投稿・審査中である。 (4) 今後の検査のあり方 今回移動寝台を用いたMR angiographyにより大動脈から末梢動脈にいたる広範囲の血管撮像法の方法論がほぼ確立された。この方法を用いることにより従来より施行されていた閉塞性動脈硬化症を始めとする下肢動脈撮影の大部分が侵襲の少ないMR angiographyで置き換わるであろうことが示された。
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