本研究は十分な止血能を有し、生体適合性が良く副作用が少ない人工血小板代替物の開発を目的としている。血小板代替物作成のためには血小板機能の中で最も基本的かつ重要な機能を担う因子を取り上げ、これを効率良く担体に導入しなければならない。我々は、血小板膜蛋白GpIb/IXを選び、それを異物としての認識が少ないと考えられているリポゾームに導入することにした。 既に我々は組換えGPIb/IXをCHO細胞で発現することに成功し、発現された蛋白は血小板上の受容体蛋白と同等の機能を持つことを報告した。平成8年度はCHO細胞に発現させたこのヒト組換え型のGPIb/IXをリポゾームに固相化したが、その際、機能的により優れた組換えGPIb/IXを得るためにいくつかの変異型蛋白を作成し、数種類のGPIb/IXをそのリガンドであるフォンビルブランド因子(vWF)とリストセチン、ボトロセチンなどの結合誘発物質を用いて試験管内で結合させ、変異型GPIb/IXの結合能を検討した。またリポゾームへの組換え蛋白の導入時の至適条件と導入効率を検討した。その結果、GPIb/IXのα鎖N末端領域を含むペプチドが最も機能的に優れていること、また至適リン脂質の組成や蛋白:リン脂質量比などが明らかにされ、今後の研究に重要な基礎的情報を得ることができた。 今後、組換えGPIb/IXが導入されたリポゾームの機能評価として、(a)in vitroでは固相化vWFへの粘着反応、および散乱光凝集メーターを用いた微小凝集塊の検出を試みる。(b)in vivoでは血小板減少マウスにGPIb/IXが組み込まれたリポゾームを注入してその止血効果を検討する予定である。
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