研究概要 |
当大学に既存する超伝導NMR装置を用い、保存肝のNMRスペクトル測定に必要な諸条件を検討した。31P-MRSでは、繰り返し時間0.5sec,積算回数600回(測定時間5分)で、PME(phosphomonoesters),Pi(無機リン),γ-ATP+β-ATP,α-ATP+α-ADP,NAD+/NADH,UDP-sugar,β-ATPの各ピークが得られた。1H-MRSを用いた保存中の緩和時間の変化では、保存液としては不適であるKrebs-Henseleit液では保存時間とともに延長した(保存前274.5【plus-minus】21.3ms(Mean【plus-minus】SD),24時間保存402.6【plus-minus】35.2ms)。通常臨床に用いられるUW液では逆に、12時間保存までは軽度短縮したが、それ以降はほぼ一定の値であった(保存前254.5【plus-minus】21.3m,12時間保存242.6【plus-minus】31.8ms)であった。さらにこれらの緩和時間の変化は、保存肝の水分量(g%)と相関していた。このことから保存に伴う細胞内浮腫が緩和弛緩の変化と関連があることが示唆された。またエネルギー代謝の面からみると、保存時間の延長とともに再灌流後の高エネルギー燐代謝物の回復は低下していおり、細胞内pHは保存に伴う肝細胞内の乳酸の蓄積とともにアシドーシスに傾いた。以上の結果から多核種MRスペクトロスコピーが、保存中の肝臓のエネルギー代謝、緩和時間及び細胞内pHなど変化を非侵襲的に測定でき移植モニター法として有用なことが確認できた。さらに平成9年度は、これらの結果を踏まえて移植後の臓器を想定した検討を行う予定である。以上平成8年度に計画された研究は
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