研究概要 |
平成9年度は前年度の結果に基づき、移植後の臓器を想定した検討としてin vivo状態で麻酔下ラットの体表から肝臓のMRSを測定する法を検討した。in vivo測定用のプローブ及びコイル等の作成を行った。腹壁を外科的に除去した状態でのサーフェイスコイル法では灌流肝と同様のMRSスペクトルが得られた。さらに外科的処置を行ないin vivoサーフェイスコイル法で問題となる介在組織の影響を検討した。この検討に関しては、信号強度や、サンプル取扱いの問題からリンを核種として行った。ラット肝を想定したファントムを用い、シム調整によって測定部位の磁場強度の均一性を高めた後に、無機リンを封入した微小サンプル(1.0mm径)を用い、サーフェイスコイル下での信号強度分布を測定した。信号強度別(100,50,0%)に等高線用に信号強度分布図を作成すると、コイル表面から4.0-6.0mmの領域が最高信号強度対して50%以上の信号を与えており、またこの部位はラット肝領域にほぼ対応する深度であった。つまりサーフェイスコイル法による測定では、空間的に完全な非測定部位の選択は困難であるが、測定条件の選択によって限局性を持たせることが可能であり、代謝変化の追跡には十分応用可能である。次に実際に肝での代謝状態の変動を測定するために、in vivo状態で肝血流遮断に伴うエネルギー状態の変化を検討した。灌流状態では血流遮断後30分でほぼ消失したが、in vivoでは30分で遮断前値の80%まで低下した。以上の測定条件を踏まえて、移植肝での検討を試みたがラット移植手技が煩雑なためデータが安定せず移植状態を想定した上記結果に止まった。しかし本研究の結果から多核種MRSが臓器保存状態の変化や移植後の肝内代謝動態のモニター法として実用可能であり、移植治療における本法の有用性が確認された。
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