研究概要 |
1.当教室おいて平成6年度科学研究費補助にて確立した癌性腹膜炎モデル家兎に対し、以下の4条件を設定し開腹下に30分間の腹腔内灌流による温熱化学療法を行った。免疫染色は6日後の播種結節を採取して行なった。コントロール群(A群):CDDP(-),腹腔内38℃、温熱療法単独群(B群):CDDP(-),腹腔内43℃、化学療法単独群(C群):CDDP20mg灌流液内混入,腹腔内38℃、温熱化学療法群(D群):CDDP20mg灌流液内混入、腹腔内43℃。 2.血中Pt濃度(μ g/ml)は投与10,20,30分でC群(n=7)3.31【plus-minus】0.50(mean【plus-minus】S.D.),4.03【plus-minus】0.52,4.20【plus-minus】0.52、D群(n=8)3.31【plus-minus】0.87,4.30【plus-minus】0.75,4.72【plus-minus】0.75。D群がC群に比して高値となる傾向があり(p=0.10,T-test)、播種結節Pt濃度(30分後)はC群(n=5)3.63【plus-minus】1.12、D群(n=5)2.76【plus-minus】0.43で、D群がC群に比して低値 3.Ki-67L.I.:A群(n=6)29.3【plus-minus】6.15(mean【plus-minus】S.D.)、B群(n=7)32【plus-minus】7.63、C群(n=5)29.2【plus-minus】3.70、D群(n=6)42.8【plus-minus】5.15。D群は、A,C群に比して1%以下、B群に比して5%以下の危険率で高値であった(Mann-Whitney' 4.Apoptosisの評価:TUNEL法陽性細胞総数(400倍10視野中)は、A群(n=5)3.8【plus-minus】2.77(mean±S.D.)、B群(n=7)11.0【plus-minus】6.30、C群(n=5)18.6【plus-minus】9.76、D群(n=6)38.0【plus-minus】29.41。D群は、A群に比し1%以下、B群に比して5%以下の危険率で高値であった。またC群はA群に比して1%以下の危険率で高値であった(Mann-Whitney's 5.まとめ:1)CDDPの薬理動態では、温熱作用により、CDDPが灌流液から血中へ移行し、灌流液中濃度が低下したため、直接浸透の減少により播種結節内濃度が低下したと考えられた。2)温熱化学療法によりKi-67L.I.で観察されたG1,G2,M,S期の細胞比率が増加し、またApoptosis発現の増加も見られたことは、温熱と化学療法併用による抗腫瘍作用増強の機序が細胞周期の変化に依存したApoptosisの誘導によることが示唆された。
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