研究概要 |
1) 肝虚血再灌流障害に及ぼすSOD-DIVEMA結合体の影響を生体蛍光顕微鏡ビデオ観察システムを用いて検討した。[方法]Sprague-Dawleyラットを各群6匹づつ1)対照、2)SOD投与、3)SOD-DM投与、4)生食投与の4群に分けた。開腹後、生体蛍光顕微鏡を用いて肝微小循環を観察した。その後Pringle法で20分間虚血した.虚血解除5分前に、2)SOD(10000U/kg)、3)SOD-DM(10000U/kg)、4)NaCl(1.0ml)を各群別に全身投与した.対照群では肝虚血以外の操作を施した。虚血解除後2時間にわたり経時的に肝微小循環動態を観察した。[結果]SOD-DMはSODに比し再灌流時間の経過とともに有意に肝微小循環を改善した(再灌流2時間後の類洞灌流率:SOD-DM95.8±0.7,SOD81.5±8.2%:小葉内白血球膠着数:SOD-DM12.3±3.3,SOD27.7±6.8cells/小葉;中心静脈内白血球癒着数:SOD-DM40.0±14,SOD253±58Cells/静脈壁mm2)。また再灌流2時間後に測定した逸脱酵素活性でSOD-DMはSODに比べ有意に低値を示した(GOT: SOD 305±49, SOD-DM 180±13 U/ml: α-glutathione S-transferase:SOD 1580±370,SOD-DM 715±67μg/l)。同時に測定した血清SOD活注ではSOD群が8.6±3.1U/mlに対し、SOD-DM群は33.0±5.9U/mlと高値を保っていた。組織学的検査では、SODおよびSOD-DIVEMA投与群では肝細胞空胞変性が生食投与群に比べ軽微であった。各投与群間で胆汁栓の分布には変化が見られなかった。[結語]SOD-DMはSODに比して、再灌流2時間後にも高い血中SOD活性を保ち、有意に肝虚血後の微小循環障害を予防し、同時に虚血後肝細胞傷害を軽減させることが判った。 2) 従来類洞灌流率や白血球膠着現象が指標とされてきたが、微小血管の直径の変化についてはいままで十分に検討されていなかった。そこで我々の構築した反復観察システムにより、虚血後の肝微小血管径の変化を研究した。[方法]虚血開始前、血行再開直後、30分後、60分後、120分後に繰り返し肝表面上の同一部位を観察した。実験後、録画画像より画像解析ソフトを用いてコンピューターで類洞径の変化および静脈径の変化を定量的に解析した。[結果]虚血後に、類洞径と静脈径はそれぞれ25%縮小した。これら血管径の狭小化は2時間の再灌流中に回復しなかった。[結語]類洞灌流率の低下や白血球膠着現象の増加するだけでなく、微小血管の狭小化も肝虚血再灌流障害のメカニズムの一つとなっていることが判った。
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