研究概要 |
70度加温処理自家骨移植の同化過程の検討を行う目的にて、ビ-グル犬の脛骨を用い、一側は温度処理骨を、対側は自家骨をそのまま戻すコントロールとし、X線写真・MRI・DEXAによる骨密度(BMD)・さらに3点曲げ試験による力学的強度の測定と組織学的検討を1ヶ月毎に行い、術後5ヶ月まで検討した。X線写真での骨癒合は16週で完成したが、コントロールと温度処理骨との差は認められなかった。MRIでは術後4週ではT1,T2共に低信号で、術後20週ではT1,T2共に骨髄と等信号となり、コントロールとの差を認めなかった。術後2ヶ月以降加温処理自家骨移植部に比較し新鮮自家骨移植部のBMDが有意に低下した。術後5ヶ月では加温自家骨移植部BMDは術後1ヶ月の80%であるのに、新鮮自家骨移植部では40%であった。経時的に力学的骨強度は低下していったが、新鮮自家骨の方がより強度が低下する傾向を認めた。術後20週では加温自家骨が平均67%、新鮮自家骨では平均36%で有意差を認めた。組織学的検討では、術後4週で骨接合部に仮骨形成を認め、12週では骨接合部に間葉系細胞や軟骨細胞の増生、新生骨形成が認められ、20週では骨接合部の境界は不明瞭となり骨癒合は完成した。新鮮自家骨移植部では加温自家骨移植部に比し新生血管の増生が強く、術後8週で新鮮自家骨移植部に血管の侵入や骨細胞・骨芽細胞を認めた。70度加温処理を行う操作ではコラーゲンや基質内のマトリクリン(BMP,TGF,IGF等)の変性は生じないので、骨芽細胞等との親和性に影響がなく、骨癒合過程は新鮮自家骨と同様に進行することが理解できた。しかし血管侵入の程度に差を認めた為、未分化間葉系細胞からの骨芽細胞の形成や骨髄からの破骨細胞の誘導の面で遅れることが予想され、温度処理自家骨の代謝・同化過程で遅れる結果、骨密度の低下が遅く初期骨強度が維持される結果と考えた。オステオカルシンやBMP-2のmRNAレベルの検討については、ビ-グル犬を用いた結果、プローブの作成に支障を来しており、現在方法論について検討中である。
|