1. アルドスナロン産生腺腫(原発性アルドステロン症)43例、コルチゾール産生腺腫(クッシング症候群)24例を対象にしてフローサイトメトリーによる核DNA量測定および核異形度の評価を行った。4C%が9%以上であり、さらに8Cピークを示す場合をtetraploidyと定義した。その結果、DNA tetraploidyを示す腺腫ほど核異型度は有意に高かった(p=0.042)。また、アルドステロン産生腺腫はコルチゾール産生腺腫に較べ tetraploidyを示す頻度が有意に高く(p=0.0004)、核異型度も有意に高かった(p=0.038)。以上の結果から、アルドステロン産生腺腫でしばしばみられる核の多形性は核DNA量と密接に関連し、tetraploid stemlineの存在に起因していることが強く示唆された。 2. アルドステロン産生腫瘍7例、コルチゾール産生腫瘍5例を対象にして、3番、7番、8番、11番、12番、17番の各染色体のセントロメアプローブを用いたFluorescence in situ hybridization(FISH)法による染色体解析を行った。その結果、コルチゾール産生腫瘍は全例diploidであり、FISHによる染色体異常は少なかった。ただし、5例中3例で8番染色体にtrisomyが認められた。アルドステロン産生腫瘍では7例中3例がdiploid、4例がtetraploidであったが、DNA ploidyにかかわらず全症例において高頻度にtetrasomyが認められた。8番染色体については全例(7例)tetrasomyを示したが、6例ではさらにtrisomyが観察された。以上より、アルドステロン産生腺腫におけるtetraploid stemlineの出現が本研究からも強く示唆された。また、副腎腺腫の発生過程にいて8番染色体のtrisomyが重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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