研究概要 |
1.子宮頚癌発生に関係するタイプのヒトパピローマウイルスに対する血清診断法の開発 2.日本(北陸地方)と中国(東北部)におけるHPV感染状況と子宮頚癌のリスクファクターの検討(成果) 1.我々は、将来の予防的ワクチンの可能性を検討するため酵母からHPV6,16型VLPを生成するシステムを世界で初めて開発した。このVLPを抗原にしたELISA法を用い患者の抗HPV抗体価について検討した。HPV6,16型感染患者血清中にに抗HPV6・16抗体が高率に誘導されていた。HPV感染の初期にはIgA・IgM抗体が出現し、やや遅れてIgGが出現する傾向を認めた。HPV16型VLP抗原に対して、DNA sequenceでHPV16型に近いタイプのHPV31,33,35,58型は血清学的も交差反応し、HPV18,45型は交差しないことを証明した。IgA・IgG抗HPV抗体の上昇はHPV感染特異的であり、IgM抗体の反応は非特異的であった。頚部細胞診正常のコントロール群に比べ子宮頚部異形成や頚癌の女性では有意に抗HPV抗体価の上昇がみられ、今後、細胞診を補足する診断法になる可能性を明らかにした。 2.細胞診正常の女性では、中国に比べ日本ではHPV31型が、中国ではHPV58型が多い傾向を認めた。HPV16,18,31,33,35,52,58,59型は両国においてhigh-risk typeであり、これらのタイプの感染は、子宮頚部前癌病変(SIL)や頚癌(CC)に対して、最も重要な危険因子であった。そのほか、未婚女性、結婚後5-20年、3回以上の妊娠・分娩、喫煙などが危険因子であったが、喫煙以外はHPV感染に従属する危険因子であった。
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