1)正常妊娠初期婦人より、インフォームドコンセント後、人工妊娠中絶時に採取された脱落膜をBravermanらの方法に従って培養し、研究材料とした。2)脱落膜の培養細胞を抗β_1インテグリン抗体、抗FAK抗体、抗タリン抗体、抗リン酸化チロシン抗体を用いて免疫蛍光二重染色した。その結果、脱落膜培養細胞の接着斑にFAK、β_1インテグリン、タリンが蛍光染色された。FAXの発現は脱落膜細胞周囲に多くみられ、チロシンリン酸化を受けていた。3)脱落膜培養細胞よりguanidine-thiocyanate法にてtotalRNAを抽出し、RT-PCR法を用いてFAX mRNAの発現を調べた結果、脱落膜にFAKのシグナルを認めた。4)7週令のCD-1雌マウスをPMSG-hCGにて過排卵誘起し、同系雄マウスと交配しhCG投与後96h後に子宮内初期胚(桑実胚および初期胞胚)を回収し脱落膜間質細胞と共培養した。コントロール群にはnormal mouse IgGを、実験群にチロシンリン酸化阻害剤であるherbimycin Aを加えトロホブラストの進展した面積をオリンパスSP500にてコンピュータ画像解析した。その結果herbimycin Aは、マウス初期胚のトロホブラストの進展を濃度依存性に抑制した。以上よりFAKは脱落膜細胞の接着斑に存在し、チロシンリン酸化を受けトロホブラストの進展に関与していると考えられた。
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