◆二機能性トロンビン阻害剤のラットにおける抗血栓作用の検討及び多機能性トロンビン阻害剤のデザイン: 山本らはラット微小血管にヘリウム・ネオンレーザーを照射し、血管内に血栓を形成する系を確立しており、この方法を用いて津田が既に開発した2種の二機能性トロンビン阻害剤の抗血栓作用を検討し、in vivoでの評価を行った。この系で二機能性トロンビン阻害剤はヒルジン、ヒルログより強力な抗血栓作用を示し、二機能性トロンビン阻害剤の有用性が明らかとなった。in vitroのアッセイ系における結果より、in vivoの系において二機能性トロンビン阻害剤はアルガトロバンより強く、持続して血栓形成を抑制すると期待されたが、抗血栓作用、持続時間ともアルガトロバンとほぼ同等であった。in vivoにおいてより効力を示し、副作用が少ない二機能性(多機能性)阻害剤を得るために阻害剤を血栓が形成されている場に特異的に集める(targeting)機能を阻害剤に付加するデザインが必要であると考えられる。活性化された血小板の膜上に存在する受容体はArg-Gly-Asp(RGD)配列を有するリガンド蛋白を認識することが知られているので、RGDモチーフを二機能性阻害剤に導入する試みを行っている。 ◆二機能性プラスミン阻害剤のデザイン: 活性中心指向性プラスミン阻害剤の最適化を行った。合成したペプチド中Tra-Tyr(BrZ)-EACA-NH_2はプラスミンのアミド分解をIC_<50>=0.35μMで阻害したのでこれを活性中心指向性プラスミンとして用いることとした。現在、Lysine binding sites (LBS)阻害剤としてはリジンを選び両阻害剤をNH_2-(CH_2)_n-COOHおよびその組み合わせで架橋したペプチドを合成中である。in vitroにおける阻害剤の評価はフィブリン分解活性の阻害、アミド加水分解活性の阻害を指標にして行う。
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