◆多機能性トロンビン阻害剤のデザイン: 阻害剤を血栓が形成されている場に特異的に集める(targeting)機能を二機能性阻害剤に付加する試みを行った。活性化された血小板の膜上に存在する受容体はArg‐Gly‐Asp(RGD)配列を有するリガンド蛋白を認識することが知られているので、RGDモチーフを二機能性阻害剤の架橋部分に導入した。ペプチドのフィブリン分解活性阻害作用とアミド加水分解活性阻害作用を検討したところ、10^<-7>〜10^<-5>Mでトロンビン活性を50%阻害した。この結果より、RGDモチーフは活性中心阻害シークエンスとある程度の距離をもつことが必要であり、また架橋部分は十分溶媒側に露出していることが必要であることが明らかになった。 ◆二機能性プラスミン阻害剤のデザイン: Tra-Tyr-EACA-NH_2を活性中心阻害シークエンスとして用い、リジンをLysine binding sites(LBS)阻害シークエンスとして選び、両シークエンスをNH_2-(CH_2)_n-COOHおよびその組み合わせで架橋したペプチドを合成した。in vitroにおける阻害剤の評価はフィブリン分解活性の阻害、アミド加水分解活性の阻害を指標にして行った。合成したペプチド中、P1はKi値1.9x10^<-6>Mで合成基質のプラスミンによる水解を阻害した。その阻害はLBS阻害剤であるトラネキサム酸の存在下減弱し、Ki値1.4x10^<-5>Mとなった。この結果はP1が二機能性プラスミン阻害剤であることを示唆した。 ◆血漿カリクレイン阻害剤のデザイン: 血漿カリクレインを特異的に阻害するPKSI‐527の阻害効果、特異性を向上させるために、各部分をそのアナログで置換し、どのような構造が阻害活性を示すうえで必要なのか検討した。その結果、阻害活性はほぼ同等で、待異性に優れた化合物を見い出した。血漿カリクレインは活性中心部位に加え、キニンと結合する部位を持っており、ここで得られた活性中心阻害シークエンスは二機能性阻害剤に展開することが可能である。
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