現在のAAVベクターは野生型の持つ部位特異的な染色体への挿入能力を持たない。そこで、AAVベクターにこの能力を付加する事を最終目標とし、その第1のステップとして、部位特異的に挿入された野生型AAVの検出方法を確立した。野生型AAVがクローニングされているpsub201プラスミドを用いて野生型AAVを作成し、HeLa細胞およびマウス由来の3T3細胞へ感染後、継代培養を続けて野生型AAV感染細胞株を作成した。これらより常法に従ってゲノムDNAを分離した。AAV挿入部位(AAVS1)とAAVのITR部分内にプライマー作成して、部位特異的挿入の同定をnested-PCR法によって行ったところ、対照の3T3細胞及びAAV非感染HeLaには認めないバンドを検出できた。これらのバンドは、用いたプライマーセットの内側のオリゴヌクレオチドをプローブをしたSouthern Blotでも検出され、更に塩基配列を検討したところ、AAVS1上のAAV-ITRの挿入を確認した。従って、上述の方法を行えば部位特異的挿入を検出できると考える。次に、AAV蛋白質Rep78遺伝子を大腸菌用融合蛋白質発現ベクターに組込み、大腸菌内でmaltose binding proteinとのfusion proteinとして発現する系を確立し、これを抗原とした抗-Rep78ウサギ・ポリクローナル抗血清を作成した。この抗血清は市販のAAV Rep proteinモノクローナル抗体(PROGEN;226.7)と同一のwestern blotのバンドを認識した。また、誘導型プロモーターとして、Dexamethasone(DX)の存在により活性化されるマウス乳癌ウイルスのLTRプロモーターの下流に、Rep78(AAV No.263-2233nt)のcDNAを繋ぎ込んだ発現プラスミドを構築し、ヒト由来HeLa細胞へリポフェクション後、10uMDXの有無によるRep78蛋白質の発現をNorthern Blotしたところ、DX依存性の発現を認めず、細胞毒性の高いRep蛋白質がDXの有無に拘わらずに発現していた。このため、AAVベクターを用いたRep蛋白質の存在の有無による部位特異的挿入能の評価は不可能になった。そこで、他の誘導型プロモタ-を検討中である。
|