本研究は主にネットワーク論を参考に、地域の社会経済状況の変化とコミュニティスポーツの発展との関係を分析することを目的としている。今年度は、昭和50年代から生涯学習の進行に取り組んできた先進地域として知られている岩手県金ヶ崎町を対象に、同町が現在取り組んでいる総合型地域スポーツクラブの経緯とその成果をめぐるアンケート調査を実施した。調査は、金ヶ崎総合型地域スポーツクラブ構成員に対し、クラブ参与によるネットワークの広がり、コミュニティ意識の実態、クラブ運営に対する意識等を問うた。 調査時期は平成9年11月であり、397の有効標本が得られた(回収率46.5%)。同町の総合型スポーツクラブは、居住地区の集落を単位に形成されている点に特徴があり、生活と密着したスポーツ組織となっていると見ることができる。従って、クラブ員のコミュニティ意識も地域共同体型モデルに該当するクラブ員の、地域活動やスポーツ活動に対する関わりが強く見られた。また、同クラブではクラブとしての活動だけでなく、個人で自由にスポーツをしたり、プログラムに参加することもできる活動内容を提供しているが、スポーツ活動の運営や問題解決に積極的に関わっていたのは個人で施設を利用する活動をしているクラブ員に多く見られた。 金ヶ崎町は、大企業の誘致といった町の経済発展にも力を入れているが、生涯学習や生涯スポーツといった生活活動を支えているのは依然として旧来の生活単位である集落を基本とした伝統的な地域共同体型コミュニティ意識を持った人々であり、社会経済発展と生活活動との脈絡の相違が示唆された。
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