研究概要 |
本年度の課題は,他国籍企業,とくに日系・ヨーロッパ企業の経済活動が,アジアにおける大都市間のリンケージをいかに強化させたかを解明することであった.まず,人口動態,都市地規模,インフラ,金融機能,交通拠点性,業務力などに関する地理行列を作成した(1980年と現在の2時点).同時に,ジェトロや東洋経済新報社の海外進出企業総覧や日本の外資系企業総覧のデータベースをもとに,アジア諸都市における日系企業の立地動向(企業数と従業員数)を業種別,年代別に整理した.その結果,都市規模や都市属性によって,企業の進出過程が異なっていることが判明した. つぎに,アジアの主要都市間航空旅客流動の起終点データを用いて,フローからみた都市間連結関係,結節構造を把握した.東京,香港,シンガポールがネットワークの中心結節点として機能し,とくに3都市間で強固な経済的な結びつきを有していることが分布図の作成から裏付けられた. 手塚は,ヨーロッパ系企業のアジア進出について基礎研究を行った.この方面の研究動向に詳しいフランスの地理学者と連絡を取り,研究の進め方や研究資料についてアドバイスを受けた.とくにパリ・ソルボンヌ大学のピット教授からは,研究の指針について具体的に有益な助言を得た. 以上をもとに,次年度は,東アジア国際的都市群システムの変化を引き起こした要因すなわちドライビングフォースについて探ることにしたい.
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