雲仙野岳(1142m)において大気環境特別観測が行なわれた1989年8月〜11月の期間の気象衛星ノアの昼夜の全データを解析し、火山噴煙の検出を行なった。さらに全球客観解析データによる流跡線解析・高層風データを利用した鉛直シヤ-モデルによる解析および桜島噴煙のビデオ映像データと雲仙野岳・阿蘇草千里の二酸化硫黄濃度連続測定データと対比して、阿蘇と桜島起源の火山ガスが70〜150km移流して大気環境に影響を与えていることを明らかにした。また、諏訪之瀬島火山のノアデータによる検出も行なった。 噴火口周辺における高濃度火山ガスの動態と気象条件の関連を解析した。阿蘇中岳火口から3kmはなれた草千里においては、風の弱い時の滞留だけでなく、強風による吹きつけの機構を指摘した。桜島山麓においては、千メートルの高度差を、強風が火山ガスと噴煙を吹き降し、山岳波を生ずる様な気象条件が火山ガス高濃度事象の主因であることを明らかにした。山頂付近の風を支配するこの様な気象条件は、気圧配置から推測できるため、火山ガス事故防止のために、通説では見落されているこの様なメカニズムを注目する必要があると考えられる。さらに桜島噴煙の映像観測と衛星画像のデータベース化を進めた。
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