イトミミズ胚D細胞系列第4小割球(4d)から形成される一対のM細胞はイトミミズ胚発生においてオ-ガナイザー様の役割を演ずる。この小割球の特異な発生能を細胞系譜および遺伝子発現の観点から解析した。(1)4dの発生運命を明らかにするために、西洋ワサビ過酸化酵素(HRP)顕微注入による細胞標識法で細胞追跡を行った。4dにHRPを注入すると、4dが等分裂してできた左右のM細胞がHRPを受け継ぎ、更にこのM細胞から放出された小さい細胞がつくる細胞列(胚帯)が標識される。胚帯から由来する細胞は正中面を越えて反対側に移動することはない。HRP注入後7日目、標識された細胞は、表皮と消化管には全く検出されないが、両者の間に位置する中胚葉領域(腎管、筋層、その他の体腔壁)をほぼ全てカバーしている。また、腹側神経節にもわずかであるが一定のパターンで分布している。同様に第2小割球(2d)にHRPを注入すると、標識された細胞は、中胚葉領域や内胚葉領域にはまったく見い出されず、表皮と腹側神経節に分布するのみである。(2)4d細胞の特異な発生能を遺伝子発現の観点から解析する最初の試みとして、4dおよびその子孫細胞で特異的に発現する遺伝子の探索を行った。それに先立ち、特定割球を除去した胚を最大10日間菌状態で培養する方法を確立した。4dを除去した胚からRNAを抽出し、正常胚との差異をcDNAサブトラクション法で解析した。4dに特異的と思われるクローンの単離にはまだ成功していないが、現在その努力を続けている。
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