鳴禽類の大脳の神経核lMANには、自分の歌を順再生すると特異的に反応するが、その歌を逆再生すると反応しないニューロンが同定されている。しかし、これに対応する行動学的なデータは得られていない。われわれは、ジュウシマツを被験体として、歌の時系列を操作した刺激を用いて、条件づけによるこれら音声の弁別過程を測定した。 オスのジュウシマツ8羽を2群に分け、一方の群の鳥は自己が産出した歌と(F)それを逆再生したもの(R)との弁別を、他方の群の鳥は、他個体が産出した歌とそれを逆再生したものの弁別をさせた。また、これらのオスと同じケージで飼育されたメスのジュウシマツ4羽も実験に用いた。弁別率が基準に達した後、歌を要素ごとに区切り、ひとつひとつの要素の方向は変えずにその順番のみ逆転させたもの(Order Reverse ; OR)と、歌を要素ごとに区切り、全体の順番は変えずに、ひとつひとつの要素の方向のみ逆転させたもの(Local Reverse ; LR)とをプローブ刺激として、FとRお弁別中に提示した。 その結果、1)自分の歌を逆再生したもののオペラント弁別のほうが、他個体の歌を逆再生したものよりも短時間で完了する。2)歌の正逆弁別ではジュウシマツはFとLRとを混同する、つまり、局所的な手掛かりに、より多く依存している、3)一般に、メスのほうがオスより歌の時間方向のオペラント弁別に時間がかかることがわかった。これらのデータは、電気生理学的に測定したlMANの神経細胞の反応特性と類似する。
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