研究概要 |
筋ジストロフィーを伴った先天性表皮水疱症(EB-MD)の1家系において、表皮基底細胞のヘミデスモゾームとケラチン蛋白の結合に関与すると考えられているplecttin蛋白の遺伝子に変異をもつことを確認した。 この患者は両親がいとこ婚で5人兄弟のうち、一人の姉に同様の症状が見られる。生下時より皮膚が弱く水疱や糜爛を容易に形成し、すぐに瘢痕を残さず治癒していた。爪は繰り返す爪下水疱のため変形肥厚していたが、歯牙に異常は見られない。30歳代より、筋の脱力が出現、徐々に進行した。姉も同様の経過をとった。 ケラチン14と5の遺伝子に異常はみつからなかった。電顕的な観察では、殆どのケラチンは水疱蓋にあり、水疱底にヘミデスモゾームと細胞膜が残り、丁度、ケラチンとヘミデスモゾームの間で裂隙が形成されたように見える。ヘミデスモゾームの構成蛋白について、蛍光抗体法で検討した結果、BP230とHD1(plectin)の減少がみられた。そのころJefferson medical college,Departments of DermatologyのUitto教授のグループがヒトplectin遺伝子をクローニングに成功し、EB-MDの患者にその遺伝子変異を見つけた。彼らの協力を得、この姉妹のpelectin遺伝子の2719番目より9bpのhomozygousなdeletion確認した。この変異はQEAの3アミノ酸の欠損を起こす。その周囲23アミノ酸の配列はヒトとマウスの間で保存されていた。 plectin蛋白は筋細胞のsarcolemmaにも存在しており、この遺伝子変異がEB-MDの原因と考えられる。
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