本研究では、個人の音楽的能力を評価するための客観的手法の確立を目指して、2音で構成される和音の認識特性を実験的に調べた。まず、220Hzから880Hzまでの間の純音(半音階で25音)のうちの任意の2音を重ね合わせて1秒間持続する音を被験者に提示し、その2音を鍵盤で再現してもらい、2つの音を答えさせる方法により、音程認識特性を調べた。また、アンケートによる主観評価も同時に行った。これにより、以下の結果が得られた。 1.2音とも正解となる完全正解の率は各被験者で異なり、0〜1の範囲に広く分布した。 2.完全正解でない誤答の中から、不完全正解のパターンを分類した結果、(1)異なる調で答える調ミス、(2)音名は正しいがオクターブのずれがあるオクターブミス、(3)2つの音のうちどちらか1つが正解である片方正解、の3つが見出された。 3.完全正解率と不完全正解率、誤答率の関係を調べた結果、完全正解率が高い群では誤答のほとんどは片方正解であること等が分かった。 4.アンケートを因子分解して得られた「音楽的知識と技術」の因子得点と完全正解率の相関をはじめ、主観量と客観量の相関が見られた。 以上より、和音の識別に基づく音楽的能力の客観的評価法の可能性が示された。
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