津波に対する災害アセスメントを行なう上で、対象地域での津波高は最重要な項目である。この津波来襲時の津波高に大きく関与する要因として、次の二つがあげられる。 ・地震発生時における津波の状態 ・対象地域での沿岸地形 前者は、波源との位置関係、初期波形の持つ全エネルギーとその場所的分布等により多様に変化し、個別性の強いものとなる。一方、後者は、対象地域を固定しあれば、何れの津波にも同様に働く影響である。そこで、本研究では、後者に焦点を絞り、実際的に実用可能な指標として、TCD (Tsunami Concentration Degree)を開発した。 TCDは、津波エネルギーの場所的集中度、すなわち来襲する全津波エネルギーの大小によらず、対象地域内におけるエネルギー集中度を表す指標である。具体的な算定法は以下の通りである。 (1)対象地域での海岸線に沿ってs軸を取る。 (2)s軸上で、津波高H(s)の自乗を総和し、全来襲津波エネルギーEtとする。 (3)対象地域内のそれぞれの単位区間での津波高H(s)を自乗し、その区間への来襲津波エネルギーE(s)とする。 (4)(2)で求めたEtにおける(3)で求めたE(s)の比率がTCDとなる。 通常は、予め津波数値計算を行い、その結果を用いてTCDを算定しておき、災害アセスメントを行う。しかし、実津波においても、対象地域での実測津波高が十分に多ければ、TCDは適用が可能である。
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