研究概要 |
細胞性粘菌アメーバは環境変動に応じて自己の形態を柔軟に変形させたり,単細胞状態と多細胞状態とを適応的に変化させるなどの機能を有する特徴的生物であることが知られている.本研究は,そのようなアメーバなどの軟体動物が狭路においてみせる柔軟性の高い行動パターン(自在変形運動)による自己組織的動作(障害物回避,物体把持など)を生成可能な方法論を開発し,その将来的発展性を検証することを目的としたものである. 研究は,生物学的知見の整理,アメーバの運動様式の数理モデル展開,シミュレーション実験を用いたモデルの検証とシステム制作,の順で実施し,以下の成果を得た.1.アメーバ様の変形動作可能な構造体表現の包含する問題空間の明示,2.群情報処理メカニズムにおける研究マップの構築,3.相互通信を有する生物群行動モデルの理論的枠組み,4.計算機シミュレーションを行うための理論構築,5.アメーバ様運動シミュレータシステムの構築.さらに,特筆すべき成果として,数理展開の章ではアメーバモデルの構成要素間の通信のために,波動の場(波動場)を導入しシミュレーションモデルを構築し,運動パターンの生成実験を行った.これにより,6.波動場を用いた群情報メカニズムを構築し,その特性を明らかにし,「Distributed Autonomous Robotic Systems 2」において論文を公表.7.相互通信の結果生じる組織的運動の様相の問題と,全体の流動性と局所的組織の様相との関係の問題が明らかとなり,「Journal of Robotics and Mechatronics」において論文を公表.8.情報処理機能を確かめるために組み合わせ最適化問題のベンチマークテストであるTravelling Salesman Problemに応用し,アメーバモデルの解探索の性能を確かめ,「Intelligent Engineering System through Artificial Neural Networks」において論文を公表.
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