in vitroにおいてオボムチンの食品機能としての価値を証明するには、生体内での挙動を考慮して、まず低分子化された状態で細胞に対する親和性を測定する必要がある。そこで、本研究ではオボムチンよりβ-オボムチン(分子量おおよそ40万)を調製し、これをトリプシンとプロナーゼなどの蛋白質分解酵素にて低分子化し、それぞれの分解物の生物活性を比較した。生物活性測定には従来から用いているニューキャスル病ウイルス(NDV)と新たにピロリ菌(Helicobacter pyrori、Hp、胃潰瘍誘発菌)、さらには腫瘍細胞の代表としてMeth Aを使用して、それらの細胞受容体に対する親和性の差異から食品機能の情報源としての構造を明らかにするように試みた。 β-オボムチン由来のフラグメントの内、NDVに対しては糖鎖の含有量の多いもの(12万フラグメント)、Hpに対してはその12万フラグメントと糖鎖含有量の少ない1〜2万フラグメント、さらにはMeth Aに対しては12万フラグメントが高い親和性を示した。12万フラグメントより糖鎖をペチドから化学的に処理して遊離させて糖鎖群として分離し、それぞれに対する糖鎖の親和性を新たに測定すると、それがいずれの親和性においても極端に減少した。従って、ペプチドに結合した糖鎖が重要であることを証明し得たと言えよう。また、さらに糖鎖の末端に結合しているシアル酸を酵素によって遊離させると、NDVとHpに対する親和性はより一層減少した。一方、Meth Aに対する親和性は上昇した。このように対象とする生物細胞の違いにより糖鎖の情報発現も異なって種特異的であるが、共通的には糖を密度高く結合している糖ペプチドが重要であると示した。
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