研究概要 |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、mRNAとして感染細胞の核より細胞質中に出た後ウイルスタンパクに合成され、細胞形質膜直下まで運ばれた後アッセンブリーされて出芽する。この際、ウイルスタンパクはどの様な経路を経て形質膜直下に輸送されるのか。本申請研究では、HIVの感染細胞・細胞質中におけるウイルスタンパクの輸送経路の解明と、輸送抑制について検討する。 このうち本年度は、ウイルスタンパクの輸送経路について検討した。これまでの予備的実験においてウイルスタンパクは感染細胞の線維性構造物上に観察されたが、一般的に細胞質中には、マイクロフィラメント(MF)・中間径フィラメント(IF)あるいは微小管などの細胞骨格を構成するタンパクが重合して線維構造を形成することが知られている。そこで本研究では、感染細胞をサポニン処理群と未処理群に分けそれぞれに対して、ウイルスタンパク(gag;p17&p24,env;gp120)と細胞骨格タンパク(MF & IF)の単抗体およびコロイド金による二重標識電子顕微鏡免疫染色をおこなった。当初の予測ではウイルスタンパク輸送に関与する主たる細胞骨格はアクチンを主成分とするMFと考えていたが、ほとんどのアクチンは脱重合状態で線維構造を構築していないためタンパク輸送に積極的に関与しているとは考え難く、IFの可能性が出てきた。感染細胞(リンパ球系;MOLT-4,マクロフォージ系;U937)IFの主成分はサイトケラチンであるところから、抗サイトケラチン単抗体による免疫染色をおこなったところ、ほとんどすべての線維構造がサイトケラチン抗体に標識された。現在は、IFとウイルスタンパクの関係について検討しているところである。
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