研究課題/領域番号 |
08F08353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸岡 啓二 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授
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研究分担者 |
LE Thanh Nguyen 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 固相坦持 / キラル相間移動触媒 / ポリマー / 不斉合成 / アルキル化反応 / 環境調和型 / グリシンエステル / ビナフチル |
研究概要 |
環境調和型不斉合成反応の開発とその実用化は、今後の有機合成化学が目指すべき一つの大きな課題である。 これを実現する一つの方法が、私どもの研究室で開発したN-スピロ型のキラルアンモニウム塩を相間移動触媒として用いた不斉合成である。元来、第4級テトラアルキルアンモニウム塩を用いたキラル相間移動触媒は、繁雑な操作を必要としないため、実用化が極めて容易であると考えられ、工業的な面からも多いに注目されている。しかし、その化学的な詳細において、いまだ判っていないことが多いため、N-スピロ型のキラルアンモニウム塩やそれらの簡略化されたキラルアンモニウム塩の系統的な合成を行い、それらのポリマー坦持法を新たに開発することにした。さまざまな不斉合成反応に適応できるように多くの触媒分子の性質を調べ、触媒分子を再設計して、実用化できるような触媒の開発を目指した。まず、当研究室で開発した光学活性ビナフチル構造を有するN-スピロ型キラルアンモニウム塩を用い、それらのポリマー坦持化を試みた。ポリマーとしては、ポリスチレン架橋されたWangの樹脂やMerrifield樹脂、或はポリエチレングリコールのモノメチルエーテルのブロモ化体を活用したが、いずれの触媒でも良い結果が得られなかった。そこで、構造が簡略化されたキラルジブチルアンモニウム塩を基本構造とし、また、ポリマー坦持化されたキラル相間移動触媒のエナンチオ選択性能力を調べるために、グリシンエステルの不斉アルキル化反応を利用した。反応後は有機相の濾過によってエナンチオ選択性が簡単に評価できるため、数多くの反応結果を短時間で得ることができ、きわめて帰納的に研究を進めることができた。その結果、ビナフチル位を官能基化させることによってポリマーと架橋したポリマー坦持型触媒が優れたエナンチオ選択性が得られることが判った。
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