研究課題
本研究は魚類における食欲調節機構を分子レベルで明らかにすることを目的とする。哺乳類では、肥満などの社会的関心の高さから食欲に関する研究が進んでおり、その分子メカニズムはかなり詳細に理解されてきている。しかし変温動物である魚類では、哺乳類とは異なる食欲調節機構を持つことが示唆されているものの、その多くが未解明なままである。動物にとって摂餌は成長や発達、生殖等に欠かすことのできない極めて重要な要因であり、魚類増養殖事業においても効率的で安定した養殖魚の供給を確保するためには、食欲調節メカニズムを的確に把握することが必要である。哺乳類では、胃から分泌されるグレリン(Ghr)や脂肪細胞から分泌されるレプチン(Lep)が脳の食欲中枢へと体の状態を伝え、視床下部のニューロペプチドY(NPY)、cocaine- and amphetamine-regulated transcript(CART)、アグチ関連タンパク(AgRP)および黒色素胞刺激ホルモン(α-MSH)ニューロンが食欲調節を決定づけている。魚類においてもこれらのペプチド群は食欲調節に重要な役割を持つことが示唆されているものの、複数の魚種で別々に単離されていることから、その相互作用の理解が進んでいない。そこで、本年度はまず遺伝子情報データベース(フグゲノム情報やサケESTデータベース)を利用して食欲調節のキーペプチド群の内未同定のもの全てをフグとサケでそれぞれ同定した。これによって、これら魚種における食欲関連ペプチドの遺伝子レベルでの解析が可能となった。また、上記遺伝子については、各魚種でその配列だけでなく組織分布や絶食応答も併せて解析しており、これらも魚類の食欲調節機構を解明する上で極めて重要な情報である。
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General and Comparative Endocrinology 160
ページ: 223-235
Proceedings of the 5th World Fisheries Congress CD-ROM proceedings