本研究の目的は、湾岸アラブ産油国における経済・社会発展と国民統合の実態について検討するものである。とくに、急激に変容するアラブ首長国連邦(UAE)において、全人口の2割にも満たないUAE国民とマジョリティである外国人との関係性や、両者に関する政策、そして国家の発展の在り方について実証的に分析することに主眼を置いている。 2年目は、1年目の調査・資料収集をもとに国内外で研究成果の発信を行った。主要には、次の2点を中心に研究を進めた。第一に、ドバイ首長国における「行政改革」の実践を重要な開発戦略として位置づけ、その実態と方向性を明らかにしてきた。研究成果についてはすでに国内の学会等で報告しており、今後『日本中東学会年報』へ英語論文として投稿を準備している。第二に、国内労働市場においてUAE国民の就労を促す「労働力自国民化」政策について、過去30年間に政策が進展しない原因を構造的に分析した。この成果についても、今後学術誌に英語論文として投稿していく。 また、基盤研究(B)「ドバイで働くフィリピン人女性のアイデンティティ再編--キリスト教徒とムスリムの比較」(研究代表:細田尚美)と共同調査を実施し、UAEにおける外国人労働者を取り巻く法制度やその生活実態の調査を引き続き行った。これらの成果は、日本中東学会(5月)やその他研究会で報告を行った。また、今年は海外での発表にも力を入れ、英国中東学会院生部会(9月)やベイルートの国際会議(11月)などで積極的に成果発信を行った。ベイルートの報告内容については、UAE現地紙のコラムでも紹介されている。その他、比較政治学会年報に投稿した論文が『国際移動の比較政治学』(ミネルヴァ書房)として刊行された。
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