小胞体に生じた構造不全タンパク質を積極的に分解する細胞機能を小胞体関連分解(ERAD)と呼ぶ。ERAD研究において、分解対象タンパク質の逆輸送メカニズムの解明は、最重要課題のひとつである。本研究では、逆輸送を担うレトロトランスロコンの候補として報告されているDerlin遺伝子ファミリーに属する全遺伝子、Derlin-1、Derlin-2、Derlin-3、のノックアウトマウスを完成・解析し、Derlinの分子機能を解明する。また、Derlinとともに機能する他のERAD関連蛋白質、とくに当研究室で同定したHerpを中心にERAD複合体の実態を解明する。平成21年度はDerlin-1とDerlin-2のホモ欠損マウス(KOマウス)が胎性致死になることから、発生段階を遡って胎仔のジェノタイピングをおこない、胎性致死となる時期を決定した。ヘテロ欠損(HET)マウス同士で交配し、胚を解析した結果、Derlin-1のホモ欠損マウスは胎齢8.5日に達する前に致死となり、Derlin-2はDerlin-1より早い段階で致死となることが分かった。このことから、Derlin-1とDerlin-2はともに発生に必須であり、Derlin-2はDerlin-1よりも早い発生の段階に必須であると考えられた。また、発生段階でのDerlin遺伝子の発現様式についても解析した。Derlin-1およびDerlin-2の発現量は各胎齢期を通して大きな変化はなかったが、Derlin-3の発現量は胎齢9.5日に最も多く、そのあと減少する傾向が見られた。以上の結果より、Derlin-3はDerlin-1およびDerlin-2と胎生期に担う機能が異なることが示唆された。
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