研究概要 |
小胞体に生じた構造不全タンパク質を積極的に分解する細胞機能を小胞体関連分解(ERAD)と呼ぶ。ERAD研究において、分解対象タンパク質の逆輸送メカニズムの解明は、最重要課題のひとつである。本研究では、逆輸送を担うレトロトランスロコンの候補として報告されているDerlin遺伝子ファミリーに属する全遺伝子、Derlin-1、Derlin-2、Derlin-3のノックアウトマウスを作製・解析し、Derlinの分子機能を解明する。また、Derlinとともに機能する他のERAD関連蛋白質、とくに当研究室で同定したHerpを中心にERAD複合体の実態を解明する。平成22年度は野生型マウスとHcrp KOマウス(正常に成長、繁殖することを解析済み)を用いて、小胞体ストレスの有無でのERAD因子群の発現量の変化を解析した。各マウスの腹腔内に、小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシン(Tm)あるいはPBS(コントロール)を注射したあと、経時的(注射後3,6,12,24時間)に肝臓、腎臓、および膵臓を摘出した。これらの臓器におけるERAD因子発現量の変化をタンパク質レベル(ウエスタンブロッティング)とmRNAレベル(RT-PCR)で解析した。以上の実験により、1)小胞体ストレスに対するERAD因子発現量の応答に臓器間で違いがあること、とくにDerlin-3について、肝臓では小胞体ストレス時のみに発現がみられ、かつ、その発現は一過的であるのに対し、膵臓では構成的に発現が見られること、2)Herpの欠損が他のERAD因子の発現量に影響を及ぼすこと、3)Herp欠損による慢性的な小胞体ストレス状態は起こっていないことを明らかにすることができた。
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