本研究は、文体論(表現分析)および思想史学(言説分析)という二つの方法論に準拠しつつ、小説家あるいは知識人として戦後日本の文化史に大きな足跡を残した三島由紀夫の諸テクストの総合的・領域横断的な分析を進め、この作家の全体像の刷新を目指すものである。平成20年度に着手した論文は、(1)「三島由紀夫『美しい星』論-核時代の想像力」(「日本近代文学」第81集、投稿中)、(2)「象徴としての天皇-1960年のテロリズムと文学」(「都留文科大学研究紀要」第70集、投稿中)、(3)「三島由紀夫『金閣寺』論-他者の一人称」の三点である。いずれも活字化こそならなかったものの着実に進捗しており、21年度中にはその成果を公開する予定である。 また今年度は、雑誌「三島由紀夫研究」(鼎書房、松本徹・佐藤秀明・井上隆史責任編集)との連携を深め、同誌に書評を掲載した〔下記11.参照〕。今後も同誌を主な論文投稿先の一つとして予定している。
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