研究分担者 |
笠谷 和比古 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90124198)
園田 英弘 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50027562)
白幡 洋三郎 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (10135543)
栗山 茂久 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教授 (60270493)
早川 聞多 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教授 (10208605)
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研究概要 |
本研究は,具体的実施の過程で下記の三つのサブテーマを設定,分担形式で進めてきたが、本年度も引き続きこれに沿って研究作業を行った。 (1)日欧文明・文化交流の前提としての,あるいは交流によって交換された,それぞれの文明・文化の特徴の比較―《誤解と偏見》の基層― (2)日欧文明・文化交流の具体的諸相―《誤解と偏見》の坩堝― (3)現代の文明・文化交流の文脈において日本がもつ国際的意味―《誤解と偏見》から《モデルとしての理解》へ このうち,(2),(3)のサブテーマについては,一昨年,昨年に総合的な研究討論会をそれぞれシェフィールド大学,ルーバン・力トリック大学で行ったが,今年度は(1)のサブテーマについて,ライデン大学でこれを行った。 すなわち,「出版」,「社会階層」,「都市と田舎」,「身体観と医学」及び「性と社会」という5つのテーマを設定し,討論を行った。出版に関して,オランダでは輸出産業としての国際的な出版が見られたのに対して,日本では国内マーケット拡大のターゲットとして女性や子ども向けの出版が盛んであったことが明らかになった。また,日本とオランダにおける社会的合意形成の比較が,日本の侍という階層の役割の紹介とともに議論された。ついで都市の中でも首都とは何かという問題について,オランダにおけるそのような問題への関心がほとんどないことが浮き彫りにされた。医学の分野では,従来オランダを通じてもたらされた西洋近世医学がいかに日本において受容されたかに関心が集中していた。ここでは日本の近世医学とオランダの近世医学の庶民がもつイメージの違いが,ヴィジュアルな資料をもとにした興味深い二つの報告によってなされた。また,近世における性に対する観念は,売春を社会的問題ととらえるオランダ側と文化的文脈でとらえる日本側の発表と大きな差異がみられた。この差異は,近世社会のみならず現代の研究姿勢や社会通念にも継続するものであると考えられる。 こうした比較可能な「固有のもの」の正確な把握を前提に「日本モデル」のグローバルな意味を問いかけた結果,西洋産の社会科学自体が日本社会に対する「誤解と偏見」を増幅しているのではないか。言い換えれば,日本を「理解可能な,一つのモデル」として包含し,説明できる理論こそ,真にグローバルな理論と言えるものになるのではないかという共通認識を得た。
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