研究課題/領域番号 |
09304062
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山内 脩 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70029643)
|
研究分担者 |
高荷 昌子 金沢大学, 薬学部, 講師 (40019667)
廣田 俊 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90283457)
小谷 明 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60143913)
|
キーワード | 芳香環スタッキング / 甲状腺ホルモン / X線結晶構造解析 / プテリン補酵素 / 三元金属錯体 / ラッカーゼ / 共鳴ラマンスペクトル |
研究概要 |
金属錯体において芳香環などにより形成される配位環境が錯体の構造と反応性に及ぼす影響を明らかにし、機能の開発を行うため、次の研究を行った。 1.芳香環にヨウ素原子を有するモノヨードまたはジヨードチロシンと芳香性ジイミンを含む三元銅(II)錯体における分子内芳香環スタッキングを構造とスペクトルから追究し、ヨウ素原子のスタッキング増強効果および芳香環フェノール酵素原子との弱い相互作用の存在を明らかにした。これらの事実は甲状腺ホルモンであるチロキシンとその受容体との特異結合におけるヨウ素原子の役割に関して、はじめて化学的解釈を与えるものである。 2.フェニルアラニンヒドロキシラーゼの反応における中心金属-プテリン補酵素結合の有無と反応メカニズムを明らかにする目的で、プテリン補酵素関連物質の鉄(II)、銅(II)、コバルト(II)錯体をそれぞれ合成し、構造を決定した。いずれの金属イオンもプテリンの4位酵素、5位窒素と結合することが判明し、鉄(II)錯体は570nm付近に特有の吸収極大を示した。これらの知見はO_2活性化における金属-プテリン酸化還元反応の役割の解明に不可欠である。 3.マルチ銅オキシダーゼであるラッカーゼはフェノール誘導体のウルシオールを酸化してウルシに変化させる酵素である。その活性中心におけるO_2結合様式の解明のため、アジ化物イオンとの結合を共鳴ラマンおよびFTラマンスペクトル法により調べ、Cu(II)-N^-_3結合に由来するバンドを見出した。この結果、N^-_3は2個のCuに対してμ-1,3架橋または1個のCuに単座配位するものと結論された。 以上の研究成果は錯体における芳香環の挙動の解明に基礎情報を提供するものである。
|