研究概要 |
[1]ガラクトースオキシダーゼの特異な反応性に注目して,その反応過程とそのメカニズムを明らかにするため,芳香環含有配位子を新しくデザインし,金属イオンに配位したフェノール環あるいは金属イオン近傍に存在するインドール環などの特異性構造の特性を,次の諸点を通して,総合的に追求した:1)配位圏における芳香環の存在様式と分子間の弱い相互作用,2)金属イオン-芳香環結合様式,3)配位圏における酸化還元反応,ラジカル生成,および機能発現,4)反応メカニズムの解明と化学反応系の構築。この結果,金属イオンによる芳香環認識機構,金属イオンと芳香環との結合と芳香環の反応性の関連を明らかにした。 [2]低分子系での研究をプラストシアニンやシトクロムfのような電子伝達金属タンパク質間の特異的会合体形成の研究へと発展させた。即ち,タンパク質とは逆の荷電を有するオリゴペプチドを用いる独特の方法により,タンパク質とペプチド間およびタンパク質間の水素結合による認識部位を特定し,加えて相互作用がタンパク質金属結合部位に合目的的構造変化を生じさせ,電子移動反応を容易にすることを明らかにした。 [3]金属イオンを含む生体系における特異的分子間相互作用を,低分子化学系を用いて錯体の配位圏近傍での一般的現象として促え,その知見をタンパク質に適用して,新しい機能錯体化学の端緒を開くことができた。また,金属イオンが示す反応場および情報発信源としての性質を活用して,生体関連金属錯体の構造と非共有性相互作用の詳細な研究を行い,錯体化学がそれまでに扱っていなかった配位圏近傍での新しい化学を開拓すると共に,この成果を金属タンパク質の研究へと応用して,相互作用の存在とこれに基づく諸現象を低分子系から金属タンパク質まではじめて普遍的に確立できた。
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