研究課題/領域番号 |
09420001
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
基礎法学
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今井 弘道 北海道大学, 法学部, 教授 (00093188)
|
研究分担者 |
安田 信之 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 教授 (00242884)
中村 睦男 北海道大学, 法学部, 教授 (30000665)
鈴木 敬夫 札幌学院大学, 法学部, 教授 (50047908)
厚谷 襄兒 帝京大学, 法学部, 教授 (90222637)
稗貫 俊文 北海道大学, 法学部, 教授 (70113610)
|
研究期間 (年度) |
1997 – 1999
|
キーワード | 法意識 / 韓国法 / 経済危機 / アジア的価値 / 友愛 / 市場原理 / 共同体 / グローバル化 |
研究概要 |
法意識・法制度はその国の歴史、思想・文化、伝統、経済などの影響をうける。1997年末に突如韓国を襲った経済危機は、韓国社会に深刻な危機意識をもたらし、経済にかかわる法制度の大きな改革を次々と生み出した。改革の方向は、韓国の対外的な市場開放と市場原理の重視であり、その内容は、株式会社法、証券取引法、公正去来法、労働法の改正を中心とし、その対象はコングロマリッドとその政官癒着にほかならない。 進行中の経済構造改革は、韓国経済のグローバル化と市場原理の浸透をもたらし、伝統的な法意識による取引慣行と官民癒着は維持できなくなるだろう。もしそのとき、アジア的な価値が存続するとしても、それは守旧的な反市場主義や反グローバル主義の再生であってはなるまい。人間の尊厳という観点からは、市場原理の過酷さよりもマシだとは言えないからである。地縁、血縁によるネポチズムが生み出す庇護は不公正・不透明で、やがて社会のモラル全体を腐敗させるであろう。そうした意味でアジア的価値を捉えるとすれば、その正当性は疑わしく、またその存続に要する社会的コストは負担の限界を超える。 他方、市場原理の受容を前提に、運と能力をもつ者が、機会における公平と事業活動における自由を得て活動できる社会は、極端に言えば、飽くなき金銭欲と支配欲に取り憑かれた、狡猾な能力と運をもつ者だけが経済を支配する社会へと人々を導く。それゆえそれが自由で公正な競争を通じて行われるように監視・誘導しなければならない。しかし、自由で公正な競争も、帰結において、貧富の差の拡大、過酷な能力主義をもたらしてしまうことは否定できない。かかる帰結を克服するためにこそ、アジア的共同体的な価値の再生が考えられる。具体的にはアジア的価値の「友愛」としての再生が求められ、高いモラルの社会の建設が希求される。
|