研究概要 |
1. CM隕石の衝撃回収実験:炭素質コンドライト(C隕石)母天体の衝撃変成作用を解明する目的で,マーチソンCM隕石の衝撃回収実験を行ってきた。今年度は,さらに高圧力(40-50GPa)での実験を行うとともに,母天体の衝撃時の加熱の影響を見積もるために,熱力学的計算をおこなった。その結果,マーチソン隕石の衝撃変化には20-25GPaあたりに大きなthresholdがあることが結論される。この圧力以下では,マーチソンはどうにかもとの組織を保っているが,これ以上になると,組織はカタストロフィックに崩壊し,大規模な溶融が起こりはじめ,脱ガスとガスの膨張が劇的に進行することがわかった。したがって,CM隕石母天体に,25GPa以上の衝撃圧力が加わると,物質は細かく粉砕され,衝撃圧力解放と同時に起こる爆発的な膨張によって吹き飛ばされ,隕石としては生き残れないと考えられる。小惑星帯にCタイプの小惑星が多いにもかかわらず,地球上で回収されるC隕石が少ないのはなぜかはこれまで大きな謎とされてきたが,今回の結果はこの問題に一つの解答を与えたと言える。 2. コンドリュール・リムの成因:コンドリュール・リムは,原始星雲のダストが集積してできたと一般的に考えられている。しかし,我々は,ヴィガラノCV隕石のコンドリュール・リムに層状ケイ酸塩からなるものを発見し,その中に,水質変成の証拠を数多く見い出した。このことは,リムが隕石母天体でできたことを示唆しており,これまでの定説に新たな疑問を投げかけている。
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