研究概要 |
1.各種のサレン型シッフ塩基マンガン(III)錯体(N,N-ブリッジ=(CH_2)_2:錯体1,(CH_2)_3,:錯体2,C_6_4:錯体3)及び5,5'-位にカチオン基(-CH_2-N(CH_3)_<3+>)を導入した上記に対応の錯体4-6を合成した。錯体3の過塩素酸塩、錯体4の過塩素酸塩、錯体6の臭化物塩のX線構造解析を行い,六配位トランス-平面型構造を決定した。 2.これら錯体の水溶液に可視光を照射すると,分子内自己酸化還元反応が起こり,その速度は4≦5<2<1<6≪3の順に増加した。錯体3の反応溶液から蛍光性物質2-(2-hydroxyphenyl)benzimidazoleが効率よくカラム精製・単離され,この光反応はシッフ塩基配位子を酸化的に環化させる極めて有力な反応であることを突き止めた。現在、単色光による反応機構解明及び蛍光性物質の誘導体合成への応用を検討中である。 3.これら錯体によるファージΦX174DNAの光切断について検討し,これら錯体のDNA切断能は5≦4<6<2<1≪3であること,及び^<32>PラベルプラスミドDNAを用いた結果,錯体6はTサイトに高い選択性(73%)を示すことを見いだした。現在,光療法などへの応用を検討している。 4.各種サレン型シッフ塩基コバルト(III)錯体(N,N-ブリッジ=((2S,3S)-CH(CH_3)-CH(CH_3)-)を合成・X線構造解析し,分子・結晶構造を解明し,異常に長い単位格子を見いだした。次年度以降光反応性を検討する予定である。 5.サレン型シッフ塩基(N,N-ブリッヂ=(CH_2)_n,n=2-6)の蛍光特性を検討し,固体での蛍光強度と結晶構造との間に相関性があることを見いだした。現在、詳細な発光スペクトルの解析や励起状態の解明を行っている。 6.シッフ塩基用ジアミン・トリアミンの銅(II)錯体によるDNAの加水分解切断に成功し,切断活性要因を明らかにした。また、各種ヌクレオチド、燐酸ジエステルとの反応をHPLCなどにより比較・検討し、反応機構の解明を行っている。
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