研究概要 |
本研究の目的はわが国の多様性に富む海岸地形とその周辺海域における風況場を予測し,その海域に建設される大規模海上施設の周辺風環境を精度良く予測評価することである.このため,最終年度の目的を次のように設定した.数値シミュレーションにおいて(1)実際の高いレイノルズ数の大気流れをより高精度でシミュレーションを行うため,LES計算を進める.(2)温度成層流の計算精度を向上させ,大気境界層に現れる日中の対流境界層および夜の安定境界層の流れ特性を数値計算で再現する.(3)乱流場としての流入条件を検討し,乱流境界層中の地形,地物周りの流れの計算を進める.(4)また風洞実験において,複雑地形周囲流の流れの可視化,速度場の計測を行い,計算結果と比較検討する.これらに対し,以下のことが達成できた. 数値シミュレーションにおいては,(1)基本的なLES計算を用いて,複雑地形周りの流れの特性を十分に再現することができた.(2)レイノルズ数は低いが,高解像度の直接数値計算(DNS)で大気における日中の対流境界層,夜の安定境界層を計算し,野外観測および風洞実験で得られている特徴的な流れ特性を適切に再現することができた.(3)大気流れを計算するためには,流入条件として乱流場を模擬する必要があるが,本研究では計算領域の上流にドライバ部を設け,そこで十分に乱流境界層を発達させる手法を採用した.この手法は簡便であるが,所定の乱流場を生成するためにはフイードバックをかける必要があることが指摘された.(4)風洞実験においては,海上空港となる新北九州空港周辺の流れ場に関して,特に複雑地形を擁する内陸側からの風向に対して,可視化実験を行い,計算結果との比較を行った.その結果,山からの大規模渦構造が海上空港周辺の流れに大きな影響を与え,これは風洞実験,計算の両面から捉えられた.
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