研究概要 |
与えられた研究期間内に得られた成果の概要は以下の通りである. 1.可食部である子葉への転流は子葉表皮細胞の細胞壁をフリースペースにして能動的に行われる. 2.珠皮(渋皮)は心皮由来の器官であり,その維管束は葉脈状に走向する.また,光合成産物等の物質は維管束から子葉と接する表皮細胞層へ転送され,フリースペースへの送り出しが行われる. 3.渋皮の剥皮性にはポリフェノールが関与するが,剥皮を容易さにはクチクラワックスの存在状態も関与していると考えられる. 4.クリ果実の糖含量は収穫後10〜14日間冷蔵する事によって増加し安定するが,低比重果実や貯蔵条件によって変化する. 5.食味は微細構造と密接な関係にあり,特に肉質については米の場合と類似している. 6.クリ果実は様々な方法で貯蔵され流通しているが,風味を考えれば鬼皮付きで冷蔵し,7日〜14日程度で加工することが必要である. 7.クリ果実は同一樹でも品質にばらつきのあることが知られているが,人工的に同じ花粉を交配しても,15ないし35%の変動が見られた.また,食味とくに糖含量に及ぼす交配花粉の影響は危険率15%程度の低い確率で認められたが,産業的に重要であり栽培現場での検討が必要である. 8.光条件の良い樹冠部に着果した果実は着果方位に関係なく,高品質であった.
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